学会とは(3)

◆論文発表だけではない

 エキサイティングな論文発表にめぐりあえるのも楽しみであるが、学者仲間で旧交を暖めることができるのも学会の楽しみである。
 いっしょに酒を飲むわけ。
 大学院時代からの友人とかが北米中、さらには世界中に散らばっているので、旧交を暖める絶好の機会なのである。(ここで「それが本当の目的で学会に行くんとちゃうのん?」とオバチャンのツッコミが入りそうであるが無視して続けよう。)
 もちろん、さまざまな情報交換もできる――新たな研究動向とか。もちろん、ゴシップにも事欠かない。なかには人脈作りに大いにはげむ学者センセー(とくに若手)もいる。就職用の面接をセットアップする学会もある(例えばアメリカ政治学会)。
 専門家が一堂に会するという好機なので、2−30社の学術関係出版社も集まる。それぞれブースを設けて新刊書などを展示する。そのようなブースをめぐるのも楽しい。時には学術書の出版可能性をめぐって、出版社の担当者と面談することもある。
 もちろん、セッションを追っていれば学界での研究動向が理解できるが、それ以外の場所でも情報獲得ができるので、学者稼業に欠かすことができない情報ハブが学会といえよう――情報過多となってしまい、かえってボーッとなってしまうこともあるが。

◆開催都市もたいせつ

 学会はホテルでコンベンション施設(会議施設)を借りて行うことが多い。一度に二千人以上の参加者があるような大規模の学会の開催は、自然、大きなホテルでの開催となる。(参加者が少なければ大学の校舎を借りておこなうこともある――カナダではそれが主流。)
 準備する主催側も大変である。フツーの学者の手におえるものではないので、ホテル側を含む業者側に準備をまかせることとなる。
 上記のISAの場合、北米、それもアメリカの大都市での開催が普通である。シカゴやサンフランシスコ、ニューヨーク、それにニューオリンズなどが定番。最近はトロントやモントリオールなどのカナダの都市でも。いずれにせよ、交通の便がいい都市が選ばれがち。参加するにはもっぱら飛行機の利用となる。(ちなみに www.isanet.org にいかれて、その左側にある
「 Conventions & conferences 」をクリックされればそういった都市の一覧表があります。)
 参加者の立場から言えば、少しは観光色がある都市のほうが、やはり良い。「いってみようか」という気持ちになる。学者といえども、それが人情というものである。
 すこし前にISAはハワイのホノルルで学会を開いたが、参加者数は記録的大規模になったとか。「いってみたい」どころか「ぜひ、いってみたい。他の仕事を調整してでも!」と多くの国際政治学者が思ったのであろう――わたしもそうであった。「これは、ゼッッッ・タ・イに行かなアカン」と思わず口に出たぐらいである。 
 で、参加したが、思いのほかキャンセルされたセッションが多いのには驚いた。皆、ビーチにいって学会サボッたんじゃ・・・・(「やっぱり」というオバチャンの声が聞こえそう)。
 別の学会はもっと国際的で、世界中の都市で開かれる。ヨーロッパもあればアジアや南米もあり、ということでこれまた海外旅行の機会となる。自然、配偶者同伴というのも多い――配偶者むけツアーを組む学会もあるほどである(ISAではそれは無い)。しかし、まじめにセッションに出ていれば、観光はチラリとだけで、時には会場ホテルに缶詰で観光の「か」の字もできなかった、ということもある。
 いずれにせよ、学会出張は高くつく。飛行機代にホテル代、それに食費等々、出費がかさむわけである。いや、ほんとうにカサム。それに一人の大学教授からみれば、所属する学会はたった一つということはないので、別々の研究大会が一年中、どこかの都市で開かれているということになる。だから、どれに参加するのか注意して選ばないと、研究費がもたない。

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学会とは(2)

 「それはいいから、セッションの内容、はよおしえて。なにするのん?」
という大阪のオバチャンからのツッコミが入るまえに、論文発表のセッションの内容を説明しよう。
 一セッションに五人ぐらいの発表者がいて、持ち時間は一人なんと一〇分のみ。短すぎるが、五人もいればそういうことになざるをえない。そのあと討論担当者が各発表に批判的コメントを加え、それに反論する機会が発表者に与えられる。しめくくりは、聴衆側(10人から100人程度)を交えた質疑応答。このプロセスを司会者がなんとか九〇分以内に終了させる、こういうわけである。
 論文発表者は、論文ーー長さは8,000-10,000 words 程度ーーをあらかじめ学会事務局に提出する義務がある(討論担当者は読了してからセッションに参加する)。
 ということで、いかにして聞いている者の関心をひいて、「なるほど、この発表者の論文は読む価値がありそうだ。研究大会が終わればじっくり読もう」と思わせるかが発表のコツ。
 これをゼーンゼン理解しないで、一〇分の間に論文の内容をすべて話そうとする学者センセーがいる――できるはずがないのに。そうなれば、聞いているほうは、情報過多となり、発表者がなにを言いたいのか、まったく分からなくなってしまう。
 最悪の場合、コーフンのあまり、発表の途中でも部屋から出て行く聴衆のセンセーもおられる。これ、ほんと。「ふん、ツマラン!」と席を立つのである。(そんなの無視して発表を続ける度胸を発表者は持つべし。)
 発表の内容を「簡潔で主旨・骨子のみに絞ったもの」にしようとしても、一〇分でまとめるのには前もって練習することが必要であるのは、想像に難くないであろう。
 で、発表が終われば質疑応答。
 その際には罵声――は飛び交わないものの、チンプンカンプンの質問が出てこないこともない。(それを頭の中ですばやく整理するのも発表者が持つべきワザのうち。)   
 中にはセッションの内容にはまったく関係のない、自分の研究をトウトウと演説する学者センセーもいる。これ、本当の話。皆の目が「ひこニャン」のごとくテンになっても、トウトウとしゃべっている。そのような場合、司会者が制止役となる。
 議論に興奮したあまりパンチが飛び交う――ことはない。まあ、紳士的・淑女的ではある。
 ということで、各発表者が持ち時間をキッチリ守るように、それに質疑応答が生産的なものであるようにリードするのが司会者の仕事となる。それは、ライオンを鞭でつかいこなす猛獣つかいのごとし――とまではいかないものの、司会者の指導力(それにたまにはユーモア)が求められるのは理解できよう。
 参加者は大学関係者がほとんどであるが、少数派として政府役人(文官に軍人)やNGO代表などもいる。ときには普段うかがいしれない諜報活動に関するセッションなどあり、「元スパイ」が昔話を披露したりして興味がつきない。
 セッションのテーマであるが、国際関係論というのは様々なことを研究する分野で、幅が広い。例えば安全保障の問題(いわゆる「戦争と平和」の問題)、国際政治経済問題(「富と平等」の問題)、さらには倫理問題(たとえば「主権を超えるような権利――例えば人権――は国際社会でいかにあるべきなのか」)といったような一般的な事柄に関する様々なセッションがある。かと思えば、各地域・国・事件・問題領域(イッシューというが、例えば国際環境問題といったようなもの)を取り扱うもの、さらには方法論に関するセッションと、これまた様ざまである。ということで、自分の関心分野以外に関するセッションも数多い(というか、それらがほとんど、というのが実態)。
 例えば最近のISA研究大会のプログラムを開けてみれば、大会一日目のところにに次のようなセッションのタイトルが見つかる。(日本語に意訳してある。)
 「世界規模な保健問題に対していかに組織的に対応していくか――知識・言説・実務対応の諸問題」
 「国際政治理論における様々な分裂――橋渡しの可能性をさぐる」
 「東アジアにおける安全保障問題」
 「人権と戦時法」
 「NGOと市民社会」
 「欧州連合と『新しい』脅威」
 「女性と国際連合」
 「軍事革新の源泉」
とまあ、こういった具合である。
 このようなセッションを一日五つこなすわけであるが、すべて自由参加なのでセッションに参加しない時限もある。また、自分が発表する予定なら、事前に準備をしなければならないので、それに時間をとられる。街にもくりだしたいし、家族のお土産を買わなくてはならないし・・・・ ということで、全てのセッションに参加できないのが実際のところである。

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学会とは(1)

 これまで学会について触れてきた。いい機会なので、その内容について説明しよう。


 ガッ・カ・イ。
 学者センセーからなる学術団体の意味と、その団体が開催する学術会議(研究大会とも呼ばれる)の二つの意味がある。ここでは後者に焦点をしぼろう。
 学会とは実際に何をするところかは正確にはわからないけれど、学者センセーたちが高尚なる学説を発表・議論しているところだ、というのが世間での印象であろう。
 実際のところ、日本での学会の内容はフツーの人にとっては謎なのではなかろうか。
 ましてや、アメリカでの学会となれば、もっと謎めいた存在と思われる。
 そこで、専門分野によって違いはあるが、参考例としてわたくの参加する学会のうち一つを取り上げ、お教えしよう。(分野によって学会も性格が異なるので、以下のことは単なる一例としてご理解していただきたい。)

◆ISAの例

 わたしの研究分野では国際学学会(International Studies
Association 略してISA)というものがある。国際関係論では世界で一番大きい学術団体(本来はアメリカのもの)であるが、年に一回、アメリカの大都市で研究大会を開く。2010年2月はニューオリンズ。
 ISAの研究大会は(普通)五日間続く。そう、5日間、ぶっ続け。
 その間に総計七〇〇ほどのセッションが開かれ研究を発表・議論する。アメリカ各地はもとより、全世界から(主に先進国から)参加者が集まってくる。
 その数、約四千人。そのうちアメリカ以外の国から来る者たちが約半分を占める。会場では様々なアクセント付きの英語が飛び交うこととなる。(ちなみにISA会員も非会員も参加費を払う。非会員も参加費さえ払えば、全セッションで傍聴可能である。つまり誰でも自由に参加できる。)
 期間中、一日が五時限に分割されていて、各時限(約九〇分)ごとに二十八ほどのセッションが同時に開かれる。これが五日ぶっ続けで行われるわけである(28X5X5=700セッション)。そしてこの他にも様々な会合がある――たとえば大学院生向けの就職セミナーとか。
 まさに一大スペクタクル。
 まあスゴイ。学者センセーがうじゃうじゃ、がやがや、会場にあふれる。
 各時限において二十八ものセッションが同時開催されるが、(体ひとつしかないので)出席できるのは、そのうちの一つ。
 なので、あらかじめプログラムに目をとおしておかないと、なにがなんだかわからなくなる。そのうえ、出席するセッションを決めても、開催される部屋の場所がわからず、結局、迷子になってしまうことも・・・。

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時差ボケと格闘中

 昨日、カナダにもどってきました。現在、時差ボケと格闘中。
 京都の実家から成田空港に向かう途中、とある大学で一時間、カナダと日本との関係について講演しました。これまたシドロ・モドロで学生さん、理解できたかしら。お世話してくださった関係者には頭が下がります。いろいろお世話になりました。
 で、すぐさま成田空港に向かい、飛行機に乗り込みました。なんと満席。中学生らしき修学旅行の団体がいました。世の中、かわりましたね。修学旅行でカナダに行くご時世となったんだから。わたしは機内では疲れがたまっていたのか、ほとんど寝ていました。8時間半後にカナダ到着。帰宅して以来、時差ボケと戦っています。
 元気があった昔は、日本から飛んで帰って、空港到着(午前中)からすぐさま大学にむかい、午後の講義をこなしたこともありました――時差ボケと戦いながら。今はそれはちょっとムリかも。
 今回の一時帰国で気が付いたこと、二点ばかり。
 まず、9時のNHKニュースで、アンカーの人が自分の意見を述べていたこと。これには驚き、失望した。ニュース放送というのは淡々と事実を伝えるのが筋で、アンカーの主観・意見を(論説の形で堂々と述べるならいざしらず)、ニュースの一つ一つあとにいちいち付け加えるのは世論誘導をしていることになる。民放でこのテのことをやっているのは知っていたが、公営のNHKでもやっているとは情けなくなったのが正直なところ。「ブルータス、おまえもか」ならぬ「NHK、おまえもか」と思わず思った次第。
その点、NHKラジオ放送のほうが良い。
 失望ばかりではない。「さすが日本!」と思ったこともあった。新幹線が5−7分毎にキッチリ走っている。それに成田空港で空港バスがきれいで、これもキッチリ定時に走っている。とくに、バスが出るときに、切符・荷物担当の人が頭をさげている様子。律儀でまじめ、これには改めて感心し、うれしくなった。思わずこちらも敬礼しかけたほど。「カナダ人、見習え!」と口走りたくなるーーいい加減なところあるんで、カナダ人。
 次の一時帰国が楽しみである。

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学会で一時帰国

 学会で一時帰国しています。一週間だけ。
 明日、カナダにもどるんですが、半年ぶりの日本です。
 「周りがすべて東洋人」という状況に最初は少々違和感がありましたが、それもすぐに解消・・・となった途端に日本を出て行きます。イヤハヤ。
 今回、学会で発表しましたが、シドロ・モドロとなりながらも何とかシノギました。そう、日本語、シドロ・モドロで。
 にもかかわらず、日本人の研究仲間と話をするというのは、在外日本人学者であるわたしにとってはたいへんありがたーい時間でした。とくに海外PhD組の同僚とは話しがあうので。
 旧友・家族に会う機会もあり、よかったです。それに今回はいつになく、高校の同窓会、そして大学ゼミの同窓会にも参加できるという幸運に恵まれました。
 ということで充実度が高い一時帰国となりました。
 次の学会発表は来年2月中旬、アメリカのニューオリンズで。こちらでは英語でシドロ・モドロで発表する予定。

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プロフィール

Author:プロフェッサーX
性格は理系クンに限りなく近い文系学者。仕事の合間をぬって魚釣りにいそしみ、カナダの大自然をエンジョイしている。

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