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教授になる方法:博士号を取得(2)

◆くせものの博士論文

 で、博士論文。これがまたクセモノ。綿密に計画したことでも実際にやってみれば、計画どおりにいかなくて問題続出――というのは世の常である。(チトふるいが)「プロジェクトX」の世界。博士論文もそう。問題続出。
 政治学や社会学、さらには歴史学の場合、海外で資料調査となれば、この「問題続出」というのが二乗、いや三乗となって研究者を襲ってくることがある。極端な場合、あると思っていた資料がなかったり、集めたものの資料の質が悪く使い物にならなかったりする。
 わたしの知っている、ある日本人学生の例。(わたしが博士論文書いていたころ。)
 この人、アフリカにおける日本企業の投資活動の研究を考え付いた。一年以上かけて文献を読み込み、やっと弱点を発見し、その弱点克服の作戦も考えついて研究計画書をなんとか書き上げた。これだけでも勲章ものである。
 ところが、である。
 金がない。
 アフリカ(たしかナイジェリア)に調査旅行に行く金がないのである。大学を通して手に入る金は十分でなく、ついに彼はアルバイトに精を出して、とうとう金を作った。これも勲章もの。
 喜び勇んで予防注射を済ませたこの彼は、ナイジェリアに飛んだ。
 数ヶ月滞在し、そして無事帰ってきた。
 で、彼に会った。
 「どうでした。いい資料が手に入りました?」
 「それがねぇ・・・・まあ、聞いてくれよ・・・・」
と彼が涙ながらに話してくれたのは、ナイジェリアでの散々たる経験であった。
 彼は日系企業の人に話を聞きたかったらしいのだが、まず現地では電話や交通機関がたいへん不備で、面談の約束をとりつけ工場に行くだけでも一苦労。いや二苦労。で、やっと面談にこぎつけたものの、しゃべってくれる話の内容は研究に使えるほど質が高いものではなかった。それに、手に入れた印刷物資料も似たような状況。あれやこれやで(現地での生活に慣れる必要もあり)時間がたち、金も少なくなり現地を離れざるをえなくなって帰ってきた・・・・。
 結局、研究計画はついに遂行できずに帰ってきたのである。途中での計画変更もできず、ドンヅマリとなってしまった彼。いつの間にか博士プログラムから消えていった・・・・。
 こういう例は極端なものであるが、それでも「途中変更」する可能性はいつでも存在する。発展途上国に行く場合、女性だと調査に行くのは危険な地域があることがわかった、おりると思っていた入国ビザがおりなかった、予測できない事件(クーデターや暴動)のため帰国しないといけなくなった等々、このテの話は案外多い。先進国ではこれらのようなことはないが、それでも、もうすこし語学をマスターしないと研究には使えないことがわかった、というようなことが起こりえる。いずれにせよ「思ったとおりにいかない」という状況はほぼ確実におこるのである。
 それで集めた資料をもとに博士論文執筆となる。この段階では、集めた資料を検討した結果、研究計画の内容を変更しないといけなくなるのが普通である。たとえば、「現在の知識が抱える弱点」を是正するのに一〇できると思っていたが手持ちの資料では五しかできないとわかれば、正直に、この博士論文の貢献度をより小さくした形にして書かなければならない。「あっ、しまった。もう少し資料が必要だ。」という場合、ラッキーであれば、もう一回、資料調査に行くことができるが、そうでない場合、これまた研究計画の内容を「手持ちの資料でもOK」というレベルに修正しなければならない。
 このような経過を経て、数章からなる博士論文の草稿をなんとか完成させるのである。その量、英文タイプで三〇〇頁ぐらい。指導教官のコメントに基づいてこれに何回も訂正を加える。指導教官が「これでよし」と言うところまで博士論文が「磨かれた」段階で、口頭試問となる。時には他の大学から専門家を外部審査員として招いて、「その道のプロ」の判断をたずねることもある。この口頭試問に合格すれば、晴れて博士号が授与されるのだ。メデタシ、メデタシ。これで大学教員になるための就職戦線に参加できる資格を持つこととなる。
 博士論文執筆は長丁場。マラソンみたいなものである。人によって違いはあろうが、完成するまで3年ほど覚悟する必要がある。分野によってはもっとかかる。私の知る範囲での記録は12年かけたというもの。ここまでねばって途中放棄しなかったというのはスゴイ。(最近は期限が決まっている大学が多い―ーわたしの勤務校では8年。期限をすぎれば自主退学となる。)



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テーマ : 海外留学
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Author:プロフェッサーX
性格は理系クンに限りなく近い文系学者。仕事の合間をぬって魚釣りにいそしみ、カナダの大自然をエンジョイしている。

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