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非常勤講師の悲哀、アメリカ方式

 日本の大学で教鞭をとる者のうち、非常勤講師、つまりパートタイム教員の数が多いのはよく知られている。実際に大学が提供する講義数のうち、かなりの数が非常勤講師によるものである

 他方、非常勤講師の方からみれば、重労働で報酬も高くない。生活していくには、数校で週10コマ(あるいはそれ以上)を負担するという具合である。こういった状況について、以前「高学歴、ワーキング・プアー」という言葉が出てきたのを覚えておられる読者もおられるであろう。

 以下のサイトによれば、W大学で提供されている約2000コマの講義のうち約半分が非常勤講師たちによるものだとか。その非常勤講師たち、年収は200~300万円。(この大学の正規教員は給料が比較的高いことで知られている。)

http://www.mynewsjapan.com/reports/1359 

 アメリカにおいても事情は似ている。現在アメリカの大学(短大を含む)で教えている全教員のうち、非常勤講師が占める割合は何パーセントぐらいと読者は思われるであろうか。

 答え: 約70パーセント。

 そう、7割である。高い率である。おしなべていえば、学生が接するほとんどの教員が非常勤講師ということとなる。(この数字、全米平均のものなので、有名大学では該当しないことに注意。)博士号をがんばって取って、やっと就職してみれば、現場では非常勤講師がゴロゴロ、ということとなる。ちなみに、これらの非常勤講師もすべて博士号をもっている(はず)。しかし、日本と同じで給料は低い。大学からの福利厚生も無し。

 ワシントン・ポスト紙に出ていた非常勤講師(そこでは adjunct professors となっている)に関する記事をごらんあれ。

http://www.washingtonpost.com/opinions/adjunct-professors-fight-for-crumbs-on-campus/
2014/08/22/ca92eb38-28b1-11e4-8593-da634b334390_story.html

 大まかにいって文系博士号の「賞味期限」は3年間。博士号を取って3年以内に正規の教職(tenure-track の assistant professor のポジション――40~200倍の競争率)に就くことがでこなければ、ずっつーと非常勤講師ということになる。

 他方、大学側からみれば非常勤講師を使うことは、予算上安上がりになる。正規教員を雇うのは高い。そのうえ正規教員は研究もする。非常勤講師の賃金は低く、福利厚生も必要ない。そのうえ教育だけやってくれるので効率が良い。ということで、一正規教員を雇うより非常勤講師を複数雇うほうが大学側にとって都合が良い、という構造となっている。なにしろ、多数の学生(収入源)をいかにして絞った教員予算(経費)でまかなうか、ということで経営が成り立つのであるから。

 こういった事情で、70%という数字が現実となっている。

 学生のほうからみれば、これは好ましいのか?好ましくないというのが正直なところ。

 一般的に言って、正規の教員による教鞭のほうが質が高い(もちろん例外はある)。一番の問題は推薦状である。つまり正規教員(とくに正教授や准教授などテニュア、つまり終身雇用権をもっている教員)が執筆する推薦状ほうが、非常勤講師の書く推薦状よりも信頼度が高い。研究者としての視点ならびに、長い教歴がものをいうからである。

 例えば、推薦状を書く際に「推薦者であるあなたは、過去に何年、そして何人教えてきましたか。それらの学生総数と比べて、あなたが推薦するこの学生はトップ何パーセントぐらいの範疇に入りますか」といった質問に答えないといけないからである。たいていの非常勤講師は若くて、教歴もあまりない。また、「大学院に進むにあたり、この学生が研究者としてやっていく素質をどう見ますか」といったような質問にも非常勤講師―ー大学院生の指導も普通はしないーーは強力な答えを提供することができない。

 学生にとっては正規教員による推薦状のほうが効果的なのである。しかし、教えてもらった先生が非常勤講師ばかりならば、いかにして強力な推薦状を3通手にいれることが可能となろうか?可能でなければ、大学院に進学できる可能性が低くなってしまう・・・・。

 こういった複雑な事情が「約7割が非常勤講師」という数字の裏にあるのである。

 
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Author:プロフェッサーX
性格は理系クンに限りなく近い文系学者。仕事の合間をぬって魚釣りにいそしみ、カナダの大自然をエンジョイしている。

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