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大学院入学選考の裏話ーー採用する側からの視点

 実はわたし、勤務先の学部で大学院担当(Graduate Studies Chairで副学部長待遇)をやったことがある。その仕事の一つが大学院入学審査を仕切ること。北米の大学では学部入学選考に関しては大学全学を統括する部署があるが、大学院入学選考に関しては各学部が自主的にあたることとなっている(ただし奨学金に関してはその自立性は弱くなるが)。そのときの裏話を少しばかりしてみよう。

◆入学審査をする方からの視点

 この入学選考のプロセス、まずは当該学部の教員からなる担当委員会が執り行う。その長が大学院担当の副学部長。この委員会の教員がもちまわりで入学申請ファイルを読み、コメントなどを加えた後、総合ランキングを作成することとなる。
 入学申請ファイルに「希望する指導教官」が記してあるので、その指導教官となるべき人のところにそのファイルがわたることもしょっちゅうである(その人が担当委員会に所属していなくても)。まあ、そうでないと指導教官となるほうも困るので。そこで、その指導教官、「どれどれ、ふむふむ、まーその、なるほど」と入学申請ファイルに目をとおす。もちろん1番の関心はその学生の博士論文執筆を指導できるかどうかという点にある。学生の研究テーマの内容が指導できる範囲にあることが、まず大前提。そして、その学生が自分で研究を推し進めていくことができるかどうかという点も重要である。というのも、いちいち手とり足とりする手間は掛けたくないのである、教官の本音は。なにしろ博士論文の量は一冊の本とほぼ同じ。それに博士論文の内容は学問の前進に貢献するものでなければならない。そういった状況なので、チーチーパッパやっている暇はない。もちろん、学生のこれまでの成績も大切であるが、根本的には「あんた、これから自力で研究やっていく素養や基盤あるの?」と指導教官は思っている。そこで、推薦状や英語論文サンプル、さらには入学動機書が大きくモノをいうわけ。
 これらの点がすべてOKでも、指導教官サン、「No」ということがありえる。「えっー、そんな殺生なー」と思うなかれ。例えば、あと2年ぐらいで引退するつもりだから博士号取得までお世話できないといったような理由。あるいは、現在指導している院生が数多いので、これ以上は面倒しきれないのでお断り、というもの。その他、入学志願者がどうしようもできない要因があるのである――ヤヤコシイ表現で申し訳ない。「今回、たまたま☆☆☆で・・・ダメでした」ということが起こる。ここの☆☆☆に、「入学選考委員会の構成が特定の分野に偏っていて」とか「奨学金の予算が少なくて」といったようなフレーズを入れてみてほしい。まあ、それが実情なのだ。
 もっとスサマジイ場合、おなじ☆☆☆に「あなたの推薦状3通のうち1通届いておりませんでしたので『不完全ファイル』となり、委員会決定にかけられませんでした」が入る場合がある――その学生がサンザン推薦状執筆者に念おししていたのにもかかわらず!超例外的にスサマジイというか悲惨なのは「あなたのファイル・・・締め切りまでに郵便では到着しませんでした。到着したのは合格通知が発送された後でした。」といったような場合(いわゆる発展途上国からの郵便物にこのような可能性があった)。最近はインターネットで入学応募できるからそのような心配は無くなったが、昔はこのような「わけわからん」ことがありえたのである、大学側もいろいろ対応策を練っていたが。
 話をランキングにもどそう。入学選考委員会が応募者をランク付けするという話であった。大学にもよると思うが、「(奨学金を積み上げても)ゼッターイに来てほしい学生」「まあ、採りたい学生」「ボーダーラインの上」「はしにも棒にも掛からない、あっちいけ」といったようなカテゴリーがあって、前の2つが合格圏。その中で本格的なランキングがなされて「えっーと、今年の奨学金予算はこれだけだから、上から〇〇番目の人まで(奨学金つき)合格、その下〇〇番までは奨学金がつかないけど一応合格」となる。(大学によっては方針により、奨学金つき合格しか認めないところもある。)で、この2種類の合格者に「おめでとう」の通知がいく。後者の最後のほうの学生は補欠(waiting listに載る)で上位辞退者が出ない限り入学できない――晴れて繰り上げとなっても奨学金がつかないことがほとんどである。残りはサクラチル(「桜散る」、つまり不合格)。このようにランキングが作られるときは、入学志願者の持つ実力のみがものをいう。超有名大学になると、「合格できなくても当たり前」の世界となる。なにしろ全世界から怒涛のごとく入学願書が集まるのだから。
  「ゼッターイ来てほしい学生」に対しては、あれやこれや働きかけて「ぜひ我が校にきてください」と説得することとなる。これも大学院担当副学部長の役目。例えば「なになに、競争校から$$$だけの奨学金オファーがあるとな。では我が校は上乗せをしよう。」といった具合に交渉するのである。まあ、これも営業。このレベルの学生になると数校から合格通知が来ていることが多いので、「勧誘」するこちらも一苦労である。
 奨学金の規模がものをいうが、その他の要因――例えば指導教官とその応募学生との研究テーマの近さなど――も無視できない。やはり質が高い学生が多いと、学部も活気づくし指導教官側もやりがいがある。それにその学部の対外評判にもかかわってくる。ということで、企業が良い学生を採用したがるのと同様に、大学も良い院生を採用したいと思い努力する。

◆ニセ願書

 審査するほうから見て頭にくるのが「ニセ願書」である。そう、ニセモノ。「えっ、そんなんホント」と思うかもしれないが、ホントなのである。それも外国人学生のもの。
 たまたまカナダの入国管理の役人と話しをしていたとき、その人の発言にこちらはタマゲタ。「実はね、某アジアの◎◎国ね、あそこからの学生ビザ申請、40%がニセモノです。別のアジアの国★★は50%がウソ。で、最悪なのはアフリカの◇◇国。80%がデッチアゲ。コマッタモノです・・・・。」あれ、カナダ本国側で、あれ、これチョットおかしいな・・・と思えば現地のカナダ大使館に連絡して調べてもらうとか。で、ビザ申請書に書いてある学校や組織が実は存在していなかったということが、おうおうにしてあるらしい。そこで、おそるおそる尋ねました、このわたし。「日本人はどうですか」と。「マッタク問題なし」との答えを聞いて安堵すると同時に、「やはり日本人はマジメである!」と低い鼻を高くしたものである。
 実際、わたしが大学院入学審査に忙殺されていたとき、とある別の大学からメールがきた。「◎◎国からの学生、☆☆☆に気をつけろ。その学生の願書、ウソモノである。」さっそく調べてみたら、あるある、その学生の願書。うちの学部に申し込んできたのである堂々と(というかヌケヌケと)。見てみると、まさにコウミョーにできているが、やはりニセモノとわかる――カラー・コピー機を使って作成した模様。
 実はこの◎◎国、この点に関しては悪名たかい。TOEFLはじめ海外留学に必要な書類――成績証も含めて――ニセモノを調達する業界がはびこっているとか。この国からの入学応募の全てがすべてニセモノではないが、同業者の間では「ニセモノ要注意」となっている。これらの願書、「ウソついても見抜かれなければ儲けもの、ウシシシ」という感覚なのである。ウソをつくなんてそもそも良くない、といった道徳観からはほど遠いといわざるをえない。アナ、おそろしや。
 このような話をうちの大学の留学担当部門の同僚としていたら、「そんなことぐらいで驚いてはイ・ケ・ナ・イ」と忠告された。留学関係者では常識らしい、このような状態は。その同僚が続けていうには、学生ビザ申請を悪用してとにかくカナダにもぐりこむことが真の目的であることが多いとか。いうなればカナダの大学を密入国の入り口とする手口なのである。
 その同僚いわく、とある中東の国から教育使節団を迎えたが、カナダに入国したとたん、その使節団はどこかに消えたしまったとか。なるほど、カナダ入国管理局が綿密にビザ申請書を検査するわけである。表向きは国際教育交流でも、裏は密入国の手口となっているのではネ。これもまた、アナ、おそろしや。「象牙の塔」である北米の大学もこういった状況から無縁ではないのである。
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テーマ : 海外留学
ジャンル : 学校・教育

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性格は理系クンに限りなく近い文系学者。仕事の合間をぬって魚釣りにいそしみ、カナダの大自然をエンジョイしている。

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